「不良住宅があった土地はいま 『東京市新市域不良住宅地区調査』で歩く東京」
※2015年11月15日実施。
この企画は近代デジタルライブラリー(現在は国会図書館サイトに併合)で公開されている「東京市新市域不良住宅地区調査」(1936年発行)をもとに全ての不良住宅地区を独自にマッピングし、その中から散策できそうな箇所をピックアップして現在どのような変化を遂げているのかを観察しに行く、というものです。私の別ブログでもこの本について少し紹介しています。
一応、実際にどこが不良住宅地区だったのかは当日参加者以外にはシークレットということにしました(そもそも公開資料なのであまり意味はないですが)。ということで写真はありません。資料では「東京市新市域不良住宅地区調査」と「過去の地図」と「現在の地図」を不良住宅地区ごとに並べて掲載したものを作成し、我ながらかなり手間がかかっています。
全体としては、現在も狭い路地や極度な密集が解消されているとは言いがたいのですが、建物自体はさすがに昭和初期からはほぼ入れ替わっています。このあたりは日本の細かすぎる土地境界、そして土地そのもののシステムが絡んでいます。
元々、湿地帯など条件の悪いところが不良住宅地区となりやすい傾向があります。一人の水路・暗渠ファンとしても、不良住宅はそれらと深い関係にあるものとして、静かに注目しています。しかしなかなかセットにして表に出しづらい話であるのも確かです。とくに近年は不動産価値を守ることが大義名分を得てしまって、地盤の弱さなどマイナスな詳細情報はとにかく公開すべきでないという一派までいるようです。また「現状がどうであるか」ではなく70年以上も前に不良住宅があったということですら、地域の悪いイメージになると考える人もいることでしょう。
私は、悪い歴史・暗い歴史も含めて歴史そのものであると思っています。大きな出来事や、立派な人が何かをしたということだけが歴史ではありません。歴史を語り継ぐということは都合の良い美談を選別することではないのでは・・・と。
過去の事件や災害被害などもそうですが、聞きたくない・掘り起こされたくないと思いがちな暗い歴史から逃げているうちにまたそのような出来事が反省もなく繰り返されることがないよう、目先の利益だけでなく過去のさまざまな側面に着目していくほうが街のためであると信じていますし、今後もそのように行動していきたいと思う次第です。どんな出来事も、「直視して変えていく」ことでしか、根本的に振り払うことはできないのだと思います。そしてその結果、暗い歴史から立ち直ったのであれば、最初から問題がなかった土地よりも誇りに思いましょう。
◆東京散歩革命のページに戻る